美術を楽しんだ子どもたち

2003年アートキャンプ報告

中田千郷さん(画家)

 後半クラスの指導は年齢で3クラスに分けて行なった。中村さん、私、パレスチナ青年のマフムード(男性18歳)、ホリー(女性24歳)の4人で担当したのは、11歳〜13歳15人のクラス。連日、飛び入り参加あり、他のクラスから出張してくる子あり、というハプニング続きだった。子どもたちはたいへんエネルギッシュ。初日から意欲満々でやって来た。何が始まるんだろうという期待ではじけるような空気、目新しい画材が並んでいることへの興味、後期授業の開幕は賑やかだった。

 初日。デカルコマニー(転写)やコラージュ(貼り絵)のように短時間に作品ができあがる作業、とても楽しく感じるようで、次から次へと作品を創りたがり、マフムードから制止される場面も。反面、翌日以降に実施した空想画や家族を描く授業では、没頭するようにマイペースで取り組む子も見受けられた。思い通りにならず不機嫌になる子に声をかけるホリー、間違ったからとすぐに新しい紙を求める子をきっぱりたしなめるマフムード。青年たちの指導者振りは、児童にとっても頼もしいリーダーの姿であったことと思う。

 さて、空想画への導入は、想像の動植物・空想世界・思ったことなど自由なイメージをという説明で画材選択は各自に任せた。多くの子どもたちは自然や牧歌的な世界を基調にした作品のどこかに、パレスチナ旗、黄金のドームなどを描き入れる。これらは58年間にわたる難民の意志であり、カタルシスであり、言語であり、すでに子どもの時から自由をイメージすることにつながる自己表現の一部となっているのだと感じている。

 また計画の段階から検討を重ねた造形工作分野では、身近な材料利用の動力車を作った。ストローの車軸、空き箱の車体を基本に、それぞれ苦労して思い思いの装飾や形で完成させた。授業の最終日は、音楽を聴きながら大きな紙に描く表現で、手も顔も「キャンバス」にしてしまった子が続出した。

 子どもたちの作品は、木版画や家族を描いた絵も、音楽を聴きながら塗り放題に絵の具を塗った絵も、総じて穏やかな作品が多く、作品表現からは気持ちよく美術を楽しんでいる様子がうかがえた。日本で展覧会をして画集を作ると言うと、自分の作品を家に持ち帰りたがっていた子も皆、ぱっと目を輝かせて歓声を上げたのが印象的だった。