頼もしい未来の指導者

2003年アートキャンプ報告

上條陽子さん(画家)

 今年は、日本から中田千郷さん、中村安子さん、西元利子さん、村秋木綿さん、山下裕子さんと上條の6人のアーティストと、ボランティア7人の総勢 13人の大所帯となった。それぞれ個性的で、経験豊か、また子どもたちの造形指導をしているアーティストもいて非常に充実した美術指導になったと思う。子どもたちが喜んでくれたことが何より嬉しい。

 今回の大きな目的は、指導者の養成。昨年の春来日した、「子どもの家」のシャティーラセンター責任者・ジャミーラさんからの要請であった。前期4日間を、14歳〜32歳の25人を対象にその指導者養成に当て、展覧会を開催した後、後期4日間では6歳から13歳約50人に遊びを取り入れた造形指導を行なった。前期の参加者のうち6人も、後期は指導に当たった。

 現地で展覧会を設定してくれていたので、前期ではその準備も兼ねて大きな作品に挑戦した。会場効果を考えて、A2くらいの大きなボール紙に、音楽を聴きながら自由に絵を描いた。若者たちは、非常にリズムに乗って躍動感あふれる作品を創り上げた。
 会場にある小さな舞台にはクモの巣のように赤、青、白、黒、色とりどりのテープをはりめぐらした。その他大きなオブジェを、ダンボールで作った。グループ毎に相談してロボット、バールベックの神殿、モスク、教会などで、もっと抽象的なものを作るのかと思っていたが、彼らのイメージは非常に具体的なものだった。

 今回の展覧会には、日本人アーティストの作品も飾り、難民キャンプで初めて日本とパレスチナの合同展ということで、バダウィ区長も出席、地元5紙の新聞が取り上げてくれた。その時の挨拶で私が言ったことは、非常に才能が感じられる子どももいるので、もっと伸ばしてあげたい、是非続けてほしいということ、日本でも展覧会を開いて、パレスチナとの交流をはかりたいということ。

 子どもたちもとても張り切って描き、良い展覧会だと喜んでくれた。中でも2年続けてワークショップに参加した22歳のウィッサムが描いた絵がユニセフのポスターにもなり、自信をつけたように見えた。やはり2度目のジャマールも、シャティーラキャンプで熱心に子どもたちにたくさん絵を描かせて、良い先生となっていた。今回初めて指導者養成コースに参加した若者たちもみな、礼儀正しく、優しく、積極的で、頼もしかった。

 今後指導者を養成するためには、美術の専門学校に通う必要があるので、そのための奨学金制度も考えていきたい。
 私ができるのは1年に8日間くらいで、それもごく一部の子どもにしか教えられなくて、それがとても残念だ。しかし、今回の子どもたちの作品を見ると、全体的なレベルが確実に上がってきている。種をまきながら、少しずつ成果が出ている気がする。継続していくことが大切と痛切に思うし、来年もぜひレバノンで美術指導をしたいと思っている。(談)